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本日は、私たち「君がいる未来」のメンバーで、元日本航空の機長、相模原市議会議員も務められた、宮崎雄一郎さんにお話を伺います。
本日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
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宮崎さんは元パイロット、そして市議会議員ということですが、どちらも小さなころから興味があったんですか?
高校に入ったころまでは、医者かプロ野球選手になりたいと思っていました。子どものころ野球をやっていて、わりと強いチームにいたんです。
でも中学時代に父を病気で亡くし、医者という職業も考えるようになりました。
その後、高校時代に親友から、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』をすすめられて読み、そこで人生が変わりました。
医者のように命を助けるのも大事だけど、坂本竜馬が目指したように、世の中を良くするにはどうしたらいいのか、と。
経済、国際交流、どの人も分け隔てなく、身分も関係なくやりたいことをできる社会にしたい、と思ったとき、それを実現するには政治だ、と思いました。
就職の際、国家公務員から政治家秘書、そして政治家という道も探ったんですが、坂本龍馬の生き方や貿易にも興味があり、結局、商社に入ろうと思いました。
航空会社を受けたのは記念受験のつもりだったので、内定をもらったときは、商社とどちらに行くか悩みましたね。結局、飛行機の訓練、仕事は今しかできない、と思って航空会社に入りました。
国際線の機長として、退職するまでの飛行距離は地球600周分、100万人のお客様を乗せました。
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その職を離れ、市議会議員になられたのはなぜでしょうか。
はい。会社が一度経営破たんし、京セラの稲盛和夫会長が事業再生のために就任されました。そのとき、稲盛さんの経営哲学「フィロソフィ」に触れ、意識が変わりましたね。
「利他の心」や「世のため、人のため」という、稲盛さんのフィロソフィを追求すればするほど、学生時代に政治に興味を持った“初心”、「日本を良くしたい」「地域を良くしたい」という思いが頭をもたげてきたんです。
そこから地域活動、消防団、自治会長、青年会議所にも入って活動しました。そういった地域での活動を経て、地方自治に関わろうと思いました。
議員としての活動で、地域の課題に直面
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今回、「君がいる未来」に興味を持っていただいた経緯を教えてください。
議員として地域のいろいろな課題を見てきました。政治は、福祉、介護、教育、環境、すべてのことを預かる立場です。
そのころ、極真空手の師匠の紹介で、同じ道場に通っているインキュベクスの上村さんと出会いました。
上村さんは福祉事業を先端的にやっていて、地域に根付いた訪問看護ステーションや、95000円で入れる介護施設など、日本の介護モデルを作っている人。
介護は、私自身も日本の課題だと思っていたんです。
その上村さんが、次の事業として「農業」と「介護・医療」を組み合わせる「ケアファーム」構想をフェイスブックに投稿しているのを見て、いいなと思いまして。
議員として地域を見て回っていても、高齢化が進んでいるのを感じていました。
また、介護の現場でもいろんな課題があることも見てきました。施設に入る人も、そこで働く人も、もっと幸せになれないか、という思いがありましたね。
ほかにも、子どもの支援や空き家の活用など、地域には様々な問題があります。「ケアファーム」には、そういういろんな要素を入れる余地があると感じました。
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「ケアファーム」は、いろいろなものが入る“ごちゃまぜモデル”でもあると、上村も言っています。
上村さんが参考にしているのは、オランダのケアファームだと聞きました。
オランダは私も大好きで、人間らしい生活ができる国だと思います。福祉も充実していて、高齢者にも尊厳がある。農業も、プロの農家だけでなく、一般の人が農場の小さな小屋で数日過ごしながら農業をやったりもできる。
「高齢になっても生きやすい社会を作る」、という上村さんの思いにも共感しました。
ごちゃまぜといえば、私は市場(マーケット)も好きなんです。いろんなものがあって、ふらっと行ける場所。
ケアファームも介護だけでなく、基本的なルールを守った上でいろんな事業者がいられるのがいいな、と思います。
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宮崎さんご自身も、ケアファームで何かやってみたいことがありますか?
農業に興味がありますね。高齢者や障害のある人でも作業ができる環境を整備したり、物流のシステム作りまで考えてみたいです。
パイロットとしてヨーロッパに行って良かったことのひとつは、パンやチーズのおいしさを知ったこと。日本はチーズが高いですね。ヤギのチーズなんかもおいしいんですよ。
リーズナブルでおいしいものをいろんな人に食べてほしいし、ほかの食材との組み合わせ方など、いろいろ発信できると思います。
上村さんが味音痴であることがブログに書いていましたので、その点は貢献できるかもしれません(笑)。
土地があれば、動物を飼ったり、放牧もできますね。ジビエなんかもいいんじゃないでしょうか。
ただ、山林は問題もあります。サルやシカ、イノシシが畑を荒らす被害は、地方自治をやっていて実感しました。
動物の被害が出るのは人間の問題でもあるので、山林の整備もできたらいいと思うし、そうやって自然にも目が向けられるようになればいいと思います。
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これからはネット通販などECサイトを充実させることも重要だということで、サイトの構築ができる人が関わる話もあります。
チーズなど作ったものを販売できるようになったらいいですよね。いろんな人が関わることで、おもしろいことができそうです。
そうですね。みんなの経験を持ち寄ることで、やりたかったけれどできなかった人ができるようになったり、素人でもアイデアが出てきたりもします。いい企業というのは、そういうものを実現していくんですよね。
それぞれの能力を活かして人の役に立つ、未来につながるコミュニティーを目指す
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宮崎さんには、いろいろな人や事業が共存するコミュニティー作りにも、アドバイスをいただけるのではないかと思っています。
“箱”を作っても、その中の人の考え方が大事だと思います。特に、リーダーがどういう考え、心を持っているか。ごちゃまぜであっても、理念、フィロソフィに共感する人、方向性と価値観は合う人が集まったほうがいいですね。
そして、いろいろな人を認め合え、助け合え、協調できる場所。1+1が2にも3にもなる、みんなの能力や思いが活かされる場所になったらいいと思います。
「○○モデル地域」「特区」というのは行政もやりますが、民間主導で「心」があるものをやることにも意義があります。
次世代につながるもの、そして今現在生きている人たちの努力が報われることも大切にしたいです。
公共の行政に関わって思ったのは、「みなさんが幸せで豊かな環境を作りたい」ということ。それには自分も物心両面、豊かでないとできないと思います。ただし、自分の利益だけでなく、稲盛さん流にいえば「正々堂々と、正しく役に立つことを」というところを、私自身も追求していきたいですね。
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有難うございます。
宮崎様との取り組みが楽しみです。
今後とも宜しくお願い致します。